シティホテル購買部の事務員


ホテルで働く仕事でフロント以外に何があるんだろう。考えながら毎日職探しをしている時、求人雑誌にホテルの購買部の事務員募集という広告が目を引きました。アルバイト雑誌の一番小さい広告でした。

アルバイトといっても、有名なシティホテルの事務なので、小さい広告でも応募が殺到するだろうという感じでしょうか。採用は難しいと思いながらも、ダメもとで面接を受けました。現在は書類審査に通った人だけ面接をする企業がほとんどですが、この頃は電話してそく面接という時代でしたから、必ずと言っていいくらい面接は可能でした。

そして、面接を受けてから2日〜3日くらいしてから、採用の電話がありました。
応募の倍率などは全然わかりませんでしたが、有名なシティホテルでさえ、何の取り柄もない私が採用されてしまうほど、人材不足だったバブルの真っただ中、良いか悪いか、そんな時代でした。望めば、仕事はいくらでもある、すごい時代でした。

さっそく、ホテルの購買部での仕事が始まりました。
購買部というのは、ホテル内で必要な備品や機材、そしてレストランやバーの食材やお酒などを一手に仕入れをする部署です。仕事内容は、各部署から購入したい品のリストを元に仕入れ先に発注したり、レストランやバーで働く人たちが直接発注した食材などがきちんと伝票通り入荷しているかチェック、一日に沢山の伝票が購買部に集まるのでその伝票を集計する仕事でした。

薄暗い地下二階の小さな事務所で、来る日も来る日も入荷される品物と伝票のチェックと、その伝票の集計という単純作業でした。ホテルで働いているという実感がまるでなく、もちろんホテルの内部や客室へ行くことも一切なく、外出することも全くなく、まるで今までの事務職と変わりないばかりか、ホテル職員が愚痴を言いに来る吹き溜まりのような職場でした。

ホテルの事務と言っても、事務は事務なんだなと思うようになりました。これなら、一般企業の方がまだ遣り甲斐があるかもしれなかったとも思いました。

明るく高級なイメージのホテルですが、長くそこに働く人たちはそんなイメージを持たなくなるようです。明るい表と暗い裏のある社会で、自分はその暗い中でうごめいていたような記憶だけが残りました。

そして、1年余りでこのシティホテルの事務職を辞めることにしました。
それでも、ホテルという場所に対する憧れというか特別な感情は消えず、ホテルには自分にとって、「何か」あるという思いは変わりませんでした。